母国フランスで絶大な人気を誇り、アメリカや日本でも耳の肥えたリスナーたちの間で高い評価を得ているフランス・ナント出身のヒップホップ・バンド、Hocus Pocus が2010年にリリースした通算3枚目のフル・アルバム。イギリスの優良レーベル、Tru Thoughts からリリースした作品で知られる女性ボーカリスト、Alice Russel のパワフルな歌声をフィーチャーしたファンキーなオープニング・トラックの "Beautiful Losers" をはじめとして、ファンクやジャズ、ソウル・ミュージックといったルーツ・ミュージックのベースにしながら、どこかでフランスのエスプリを感じさせるサウンドは、バンド・スタイルでヒップホップ・サウンドを聴かせるアーティストたちの中でもオリジナリティを感じさせる独特なものだ。それまでの作品以上にラップがフィーチャーされているのも本作の特徴で、フランス語のラップが持つ柔らかな響きとフロウが、心地よくポップな印象を与えている。全体に漂うピースフルなバイブと洒落た空気感は、他国のアーティストからはなかなか感じられない種類のグルーブ感だ。