夜行秘密

夜行秘密

「時代の風を感じながら変わっていきたい」。indigo la Endの川谷絵音(Vo/G)は、Apple Musicに語る。新型コロナウイルスの感染拡大により、ライブ活動が思うようにできないまま過ぎた2020年。しかしindigo la Endの4人はそこで立ち止まってはいなかった。indigo la Endが結成10周年を経て2021年に完成させた6作目のフルアルバム『夜行秘密』。川谷絵音はその制作過程についてこう語る。「いつもはライブをしながら曲作りを行うので、そこからのフィードバックを受けて“ライブ脳”のままレコーディングしていました。今回はそれができない代わりに、“楽曲は楽曲で”と頭を切り替えて集中できたところがあり、これはこれでいい経験だなと思いました」その言葉に長田カーティス(G)も同意する。「家にずっといたので、音楽と向き合う時間、ギターを弾く時間が純粋に増えた。そのぶん新しいサウンドを見つけることができたので、すごく貴重な経験だったと思います」いつもとは違う状況で取り掛かったアルバム制作。ソングライターである川谷絵音の脳裏には、初めにアルバムタイトルの『夜行秘密』が浮かび、そこから各楽曲のイメージを膨らませていったという。例えば「夜光虫」は、こんなふうに生まれた。「この曲の“まだ朝だった”というフレーズは、動画共有サイトで見たルーティン動画から着想を得ました。その動画の中でモーニングルーティンを配信している人が、最後に“まだ朝だった”というようなことを言っていたので、それを歌詞にしようとひらめいた」(川谷絵音)川谷絵音は目に映るあらゆるものからインスピレーションを受け、曲に変えていく。そのソングライティング術は実にユニークで、型破りとも言える。「なんとなくメロディに合わせて適当な言葉で歌ってみて、その適当な言葉が存在するかどうか検索してみることもあります。そうすると、たとえその言葉がなくても語感が似た言葉が引っ掛かるんですよ。そこから検索の数珠つなぎみたいに言葉を手繰っていくこともあります」(川谷絵音)その斬新な作詞法を聞いて、長田カーティスは「そんなことをしていたなんて知らなかった」と目を丸くする。「彼はいろんなインプットの方法を持っているし、そのぶんたくさんアウトプットもできる。川谷絵音は天才だと言う人もいるけど、それだけでなく、努力家でもあると思います」恋愛ソングに定評のあるindigo la Endだが、本作では新たな境地も見せる。中でも「不思議なまんま」「晩生(おくて)」「さざなみ様」と続く中盤の3曲には、川谷絵音の人生観がにじみ出ている。「歌詞を書く上では、人と人の関わりを描くことを念頭に置いています。特に恋愛は人と人が深く関係するものだから恋愛ソングを書くことが多かったけど、今回14曲を作る途中でさすがに書き切った感があった。そこで、僕が生活の中で思っていることを主観を交えて書こう、そうすることでアルバムに深みが増すだろうと考えました」(川谷絵音)ソングライター川谷絵音の変化に呼応するように、バンドメンバー3人の演奏に対する意識も変わってきた。繊細かつエモーショナルなギタープレイで歌を彩る長田カーティスは言う。「昔は単純に自分の思うメロディを弾けばいいと思っていたけど、今はそれをバンドの演奏全体にいかにうまくなじませられるかを考えている。ただ単音を弾くのではなくアルペジオの中に落とし込んでみようとか、歌の邪魔をし過ぎないようにとか、そういうことを考えながらギターのフレーズを作っています」歌と演奏の両面で表現の幅を広げた『夜行秘密』。充実した14曲を経て、彼らの目線はすでに新たな目的地へ向いている。「次はこうしようというアイデアがいっぱいあるので、新曲も作り始めています。今こうしているうちにも、自分の中でどんどんやりたいことが湧いてくるんですよ」(川谷絵音)

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