A Daze In A Haze

A Daze In A Haze

「自分たちの中で一回リセットされた感覚があった」と、リードボーカルの秋山信樹はApple Musicに語る。UKインディーロックへの憧憬(しょうけい)から出発し、一作ごとに着実に成長してきたDYGL。しかし彼の言葉を裏付けるように、3作目となる本アルバムはいまだかつてない転機の一作に仕上がっている。新型コロナウイルスの影響で活動拠点のイギリスから日本に一時帰国したことも、心機一転を促す一つの契機となったようだ。「自分たちがどういうことをしたら楽しいのかっていうことを、ゆっくり考える時間を持つことになったのは、もしかしたらコロナがあったからこそだったかもしれない」と彼は言う。「もうろうとした気分で霧の中に佇む」イメージを喚起させるタイトルには、コロナ禍における私たちの心境が反映されている。先行シングルの「Sink」でも、パンデミックが生む閉塞感が歌詞ににじんでいた。しかし本作の大きな魅力の一つは、その“霧”を晴らすようなポジティブな響きを兼ね備えていることだ。アンセミックなメロディがけん引する「Wanderlust」や、ダンサブルなリズムとポップパンクの疾走感が融合した「Half of Me」を聴くと、音楽には明日を変える力が宿っていることを再認識させられる。「ビリー・アイリッシュみたいな時代の寵児とされている人が結構ダークで、実際そういうサウンドが一般化していく中で、俺らはひねくれ者なのかな。逆にすごく楽しい曲を聴きたいモードになった。今、外にも出られなくて、やることもないという中で、むしろ青空と芝生を感じるような抜け感のある曲を聴きたいという話をしていたんです」(秋山)「Half of Me」では彼いわく、「サイバー感や、2000年代初頭の感じを自分たちが今解釈したらどうなるのか」というテーマもあったという。他にも「グッと内側に入り込むような曲」(秋山)である「The Search」や、トラップを消化した「7624」など、大胆にジャンルを越境してサウンドを再構築していく流れもスリリングだ。インディーやガレージロックといったカテゴライズは、もはや彼らの一要素にすぎない。ギターの下中洋介はこう語る。「レディオヘッドも最初のアルバムはけっこう初期衝動的でしたよね。そのエネルギーをバンドとして一回体験してから、後々そのエネルギーを失わずに作り込んだ曲をやるようになっていくというのは、良いバンドの『あるある』なのかなと思ったりします」『A Daze In A Haze』でカラフルなサウンドのバラエティを開花させ、未来の多くの選択肢を獲得したDYGL。彼らにとって、これからも揺るぎないバンドの核となるものは何なのか。秋山は言う。「やっぱりロックという音楽が持っている良さ、楽しさは自分たちの土台になっていると思うので、どういう音楽をチャレンジしていくにしてもそこはあると思うんですよね。自分たちが音楽を最初に好きになったきっかけを大事にするというのは、その先何をやるにしても強みになってくると思うんです」

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