SEES

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「前作『PEOPLE』と今回の『SEES』は、ゆずのこれまでと今、未来を結ぶような2作になったんじゃないかなと思います」と、ゆずの北川悠仁はApple Musicに語る。 2022年にデビュー25周年を迎えた、ゆず。彼らは3月に16作目のアルバム『PEOPLE』を発表し、その後、夏まで続くツアーを開催している。そして、ツアー中である6月に、17作目となる『SEES』を発表した。立て続けに新作をリリースした経緯を北川はこう語る。「もともとは『PEOPLE』だけを作る予定だったんです。でも、1つのアルバムに収まらないほど曲数や作品の幅があったので、思いきって2作に分けることを決めました」 『PEOPLE』からのつながりを持つ『SEES』には、さらなる未来の展望を示す楽曲がそろった。「RAKUEN」ではOffcial髭男dismの藤原聡と初共作し、「明日の君と」では小説家・宮下奈都とコラボレーションして作詞すべてを初めて他作家に委ねた。彼らは25年という長いキャリアを持ちながら、今も新たなチャレンジを重ね、時代に呼応した歌を生み出している。岩沢厚治は言う。「いろんな人と組んで新しいことでも恐れずに取り組めるのは、僕たちが2人組であるからこそできることじゃないかと思います。2人の個性もまったく違って、僕ができないことはリーダー(北川)がやるし、リーダーが手の届かないところに僕がいる。お互いに相手を『すごいなあ』と思っています」 タイトルの『SEES』には、未来を見据える2人の思いが込められている。「“SEE”は“見る”という意味の動詞ですが、“見渡す”という意味もあって。これから僕たちとみんなはどんな未来を描くんだろうとこの先を見渡していく、そのイメージが今の自分たちに合うなと思って選びました」と北川は語る。新たなゆずワールドを切り開く本作から、以下、2人にいくつかの曲を解説してもらおう。 君を想う 北川悠仁(以下北川):『PEOPLE』の収録曲「Overture~PEOPLE~」がとても気に入っていて、そこから発展させた曲です。『SEES』の柱になる曲として、今の僕らとリスナーを結べる曲を作りたいと思ったときに、「Overture~PEOPLE~」のフレーズをモチーフにしたら面白いんじゃないかなと思って。自分たちがこの時代の中で響かせられる“スタンダード”とはなんだろうと、考えに考え抜いて作った楽曲です。 RAKUEN 北川:プロデューサーの蔦谷好位置くんが声を掛けてくれて、Official髭男dismの藤原聡くんと3人でごはんを食べに行ったんです。そこで話が盛り上がり、さらに蔦谷くんの家で飲んで、「何かやってみようか」という話になった。それがコロナ前の2019年でした。そこで僕が「RAKUEN」というタイトルとちょっとしたフレーズを投げかけて、その後のコロナ禍ではオンラインでメッセージを交換しながら、仕事の合間を縫ってアイデアを持ち寄り作っていました。ゴールは設定せず、3人でやったら面白そうだねっていうところから発展して楽曲ができるのは、すごくミュージシャンらしい作り方だし、ある種自然な流れかなとも思います。藤原くんはすごくハイレベルなミュージシャンで、マニアックなことをやろうと思えばいろんなことができると思うんですけど、王道から逃げずに音楽と向き合っているという意味で、僕らもすごく共感できるところがありました。 明日の君と 北川:僕らは25年間の中でいろんなコラボレーションや、自分たちの枠組みを打ち破るようなトライをいっぱいしてきましたが、歌詞のすべてを他の人に書いてもらうことはなかったんです。それで、もしリリックを書いたことのない小説家の方に歌詞を書いてもらったらどんなふうになるんだろうという興味が湧いて、僕の好きな作家の一人である宮下奈都さんにお願いしました。宮下さんが最初に書いてくださった詩は、言葉の一つ一つにきらめきや悲しさ、奥行きがあって、まるで短編小説のようでした。それをどうエディットしてメロディに乗せるかというのは、ある種ポップス職人としての腕の見せどころなので、非常に燃えましたね。一度メロディに言葉をはめたものを宮下さんにお返しして、さらに2コーラス目を作っていくというやりとりを重ね、今までやったことのない新しい作り方ができました。 ゆめまぼろし 岩沢厚治(以下岩沢):『SEES』の全貌が見えはじめて、あと何が足りないかなという話をスタッフとした時に、「岩沢くん、ゆずみたいな曲書きなよ」って言われて(笑)。あんまりゆずらしさに寄せ過ぎると面白くなくなっちゃうから、けっこう苦労しました。結果、ちょうど良いところに着地できたかなと思ってます。 AOZORA (YZ ver.) 北川:ラジオ局の春のキャンペーンソングとして作らせてもらった曲です。そのテーマとして頂いたのが、“このコロナ禍で、みんなの心が青空になっていくような曲”。刻一刻と変化し続ける時代において難しいテーマだな…と思いましたが、このコロナ禍からどうやってみんなで踏み出していくかを正面切って曲にしようと思うきっかけになり、リクエストされたテーマに背中を押してもらって作ることができました。 イセザキ 岩沢:昔の仲間とやりとりをする中で生まれた曲です。「どこどこのお店がつぶれたよ」とか「あそこのマスター亡くなったよ」とか、そんな話をしながら、そういえば伊勢佐木町のことをちゃんと書いたことがなかったなと思って。伊勢佐木という街は、ゆずとしてライブをしていたころは楽しい思い出しかないんですけど、それ以前に僕一人で歌ってた時は、それはもう厳しい世界だった。それを書き記せるのは僕しかいないのかなと思って、今だからこそ書ける曲を書こうと思って作りました。 Long time no see 北川:アコースティックギターを弾くと手癖が出たり、コードを装飾したくなったりすることもあるんですけど、そういうのを手放して、シンプルなコードとループで作っていった曲です。洋楽の制作風景を見ていると、「そんなにシンプルなモチーフをスタジオに持っていって、そこから作るんだ」とか参考になるんですよね。僕らは割と出来上がったものを持ち寄ることが多かったので、今回は何曲かシンプルなモチーフを基に作ってみました。その試みを最初にしたのが、この曲でした。

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