タオルケットは穏やかな

タオルケットは穏やかな

「あまり力まずに、長く長く歌い続けられるような歌を作りたいと思っていました」と、カネコアヤノは6作目のアルバム『タオルケットは穏やかな』について、Apple Musicに語る。前作『よすが』から1年9か月ぶりとなる本作は、これまでの作品と同様に、バンドメンバーと伊豆のスタジオで制作された。「バンドのみんなと共同生活をして、“おはよう”から“おやすみ”までずっと一緒でした。いちばん付き合いが長いのがベースの本村くん(本村拓磨/ゆうらん船)で、私が音楽をやり始めた18歳くらいから一緒にやってる。そう考えたら私たち、相当仲がいいのかも(笑)」 カネコアヤノの歌はとても自由だ。気分の高揚と共にテンポが上がり、穏やかな気持ちのときはゆるやかにスローダウンするというように、心の動きと一緒にテンポやリズム、グルーヴを自在に変えていく。アレンジは最初から作り込み過ぎず、バンドメンバーと楽曲の方向性を共有し、みんなで音を合わせたときに生まれるアイデアも大切にしている。そこで今回大きな存在感を示したのが、新たに参加したドラマーの照沼光星だった。「照ちゃんがこのアルバムの空気感を作ってくれたように思います」とカネコアヤノは言う。「照ちゃんの中に流れてるリズム感が素晴らしくて、彼の歩み方、進んでいくリズムに任せてみようという感じがありました。リズムボックスを使った『もしも』以外は、全曲クリックを使わずに演奏しています」 歌詞も形式にとらわれず、その時々に感じたことを言葉で写し取っていく。一人称は“私”や“僕”、時には“おれ”でもある。また、一人称と二人称(君/あなた)、三人称(彼/彼女/あの子)の視点が1曲の中で自由に入れ替わっていくようなものもある。「特別意識して書いているわけではないんですけど…」と前置きをして、カネコはこう説明する。「ふと考えた自分の思いをAメロに書いて、違う日にサビを作ろうとしたときにはもう全然違うことを考えてて、それをそのまま書いちゃうことも結構あります。人称とかをちゃんと統一しなきゃって考えた時期もあるんですけど、最近は自然に書いていく中でその言葉が当てはまったのなら、それでいいんじゃないかなと思って。自分の中に降りてきたものを信じてもいいのかな、あんまり縛られずにやってみようという気持ちになってきています」 その軽やかな感性は、アルバムタイトル曲「タオルケットは穏やかな」にも表れている。「私にとってタオルケットは、お布団にあると安心できるアイテム。自分がすごくピリピリ、トゲトゲして、お布団から出られないような日でも、それがあればめっちゃ安心する。そういう安心感をくれるものが人生にあればそれでいいのではないだろうか、という思いでこのタイトルを付けました。そういえば、うちのお姉ちゃんも幼少期からずっと一緒の牛のぬいぐるみがいて、汚いんだけど(笑)、本当にかわいいんです」。そう言って楽しげに笑うカネコアヤノの朗らかな歌が、肌になじんだタオルケットのように聴く人の心を温めてくれる。

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