フジファブリックというバンドのエッセンスをぎゅっと濃縮した12作目のアルバム。2024年にメジャーデビュー20周年を迎えるにあたり、“原点回帰”がテーマとなった。「KARAKURI」や「ショウ・タイム」のように、めくるめく展開で意表を突く楽曲構成は彼らが得意とするところ。どこか不思議なメロディ、予想を裏切るアレンジ、特徴的なシンセサウンドなど、遊び心いっぱいの仕掛けでワクワクさせてくれる。一方、これまでの道のりをしみじみと歌う「Portrait」や、素朴な温かさに満ちた「月見草」のように、情趣あるノスタルジックなナンバーもフジファブリックを語る上で欠かせない。エモーショナルな一面や、いたずらっぽい表情、とぼけた味など、彼らが初期から持っていた多彩な特性は、20年のキャリアを経てさらに味わい深くなった。「音楽」は志村正彦を含む4人で活動していた頃の情景が浮かぶ歌で、あえてほころびを残したような演奏が胸に染みる。