NUNKI

NUNKI

菊地成孔らを迎えたフリージャズ/現代音楽的なアプローチの前々作 「Trapeziste」 や、初となる映画『いちばんきれいな水』への出演などを経て、めまぐるしく変化を遂げつつあるカヒミカリイの2006年度のアルバム。「NUNKI(ヌンキ)」とは、月のそばに存在する星の名前だそうで、アラビア語で“海が始まる印”という意味を持つ。彼女自身、本作では音の質感にこだわっていると語っており、その音の粒子と天体という存在がつながったのだそう。その音を担うプロデューサー陣には、大友良英、ヤン富田、ジム・オルークといった錚々たる名前が並ぶ。ヤン富田が手がける曲にはドゥーピーズや小山田圭吾もゲストとして参加。瞬間瞬間でめまぐるしく表情を変えるコードワークが印象的な "He Shoots The Sun" や、フレンチクラシックスな風格すら漂う "Night Train"、 "Mirage" を手がけるジム・オルークの楽曲群は、「ユリイカ」 の作者による久々の歌ものということだけでもその価値ははかりしれない。ヤン富田が手がける2曲 "I’m in the rain"、 "歩きつづけて" は、氏特有の透きとおったエヴァーグリーンな世界が堪能できる。そして本作のメインプロデューサーである大友良英演出曲に至っては、その、具体音、笙、ギター、ハープ、発信音などを駆使したエクストリームな音作りは、ブリジット・フォンテーヌを始めとする実験的な女性ヴォーカルアルバムの歴史に肩を並べるほどの緊張感を生み出すことに成功している。彼女にとってメルクマールとなる作品だ。

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