月が昇れば

月が昇れば

オープニングの “COME ON!” はプライマル・スクリームを彷彿とさせる南部的なロックンロール・ナンバー。“ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー” はギターがガリガリ鳴るガレージ的なロックだし、忌野清志郎への思いを唄った “Phoenix” は壮大にして重厚な曲である。しかしこのアルバムの前年(2008年)に発表された “やぁ 無情” は柔らかな歌を聴かせるバラードだったし、さらに歌のストーリーに情緒が見える “映画監督” あり、一人で悶々とするエレクトロ・チューン “後悔シャッフル” あり……と、ひと筋縄ではいかない斉藤の感性が存分に発揮された好盤だ。ここ数作同様、基本的には彼一人がマルチ・プレイヤー的な取り組みで完成させているが、この人の面白さはそうして個の世界に入るほど楽曲のバリエーションが広がること。一般的にはバラード・シンガーとしてのイメージのほうが先行気味だが、そんな文脈も無視して好き放題やるのびのび感こそが、その規格外の個性を促すのだろう。デビュー16年目に作られた作品ながら、若かりし日を回想する “Summer Days” のような青い感情を忘れていないのも、また大いなる魅力。過去の楽曲でも多かった月にまつわる歌があらためて多く出てきたアルバムで、そのぼんやりとした、しかし優しげな雰囲気が、斉藤の音楽にじつに見合っている。

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