奇妙なようでどこか懐かしく、しかも楽しいこのアルバムは、いわば音の楽園だ。前作「EXIT」以来2年半ぶりに発表された2010年作。50曲以上のマテリアルから絞り、例によってトクマルひとりの手で、時間をかけて作り上げられた。楽曲全体としては幸せな光景をイメージするところから始まったそうで、そこで主にモチーフとされたのが子供たちの姿。さらに当初から「いいもの」「長く聴けるもの」「生活になじむもの」といった青写真があり、その結果出来上がったのは、あたたかいメロディラインとピュアな音色が際立つ音楽となった。複雑なリズムとポップなメロディの相性がいい “LaHaNa” や “Rum Hee”。また、ピアノの弾き語りを中心にした “Linne” ではミュージカル・ソウ(ノコギリ)も聴こえるなど各所に不思議な音色が仕込まれているのは、身の周りのものを何でも楽器にしてしまうこのアーティストの真骨頂。それだけにトイ・ポップ的な曲も多く、これらと彼の優しい歌声との相性がいい。しかも耳なじみがいいのに、どの曲もポップスの定型に収まっていない事実には驚嘆させられる。楽曲がCMや各所の番組内で使用されたり、海外公演をこなすなどでその存在が徐々に認知されていったが、そうした多様な活動を集大成した作品といえる。
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