ジャズ・ヒップホップ・バンド Ovall のベーシストとしても活動するトラック・メイカー Shingo Suzuki。その個性を生かし、自ら生演奏した音をサンプリングしてトラックを作り上げる"生音トラック・メイカー"を自称する。彼の1stアルバム「The Abstract Truth」には、そんなサウンドが満載だ。クールでソウルフルなビートの上に的確に配置される楽器音は、プレイヤーならではの独特の間合いを感じさせる。フランスで活動するなど、ワールドワイドな視点で磨かれたセンスはとても日本人のそれとは思えないほど。カナダをベースに活動する Moka Only、話題のフレンチ・ヒップホップ・バンド Hocus Pocus の 20syl などのゲストMCも憎い。自らネットを通じてこれらのアーティストにコンタクトを取るそのポジティブさと、コラボレーションによって実証される確かなサウンドプロダクションは、インターネットが生み出した音楽の新たな可能性を見事に映し出した結果のアルバムといえる。ジャジーな風合いと、フレンチ・ラップを効果的にフィーチャーするスタイリッシュな構成、自らが手がけたという秀逸なアートワークなど、個人で愛する世界をどこまでも追求、具現化している。