ディレイのかかったギターから始まる本作は、通算で17枚目となるアルバム。鍛え抜かれたバンドのアンサンブルは確かで、エイトビートやギター・リフの気持ち良さ、さらに加藤ひさしによるメロディアスな楽曲の質の高さには、ベテランならではの堅牢なものが横たわっている。しかしここにあふれている感情は、むしろ彼らがデビューの頃から持ち合わせてきたものと同質で、そこにみずみずしさが流れ続けていることもまたコレクターズの魅力なのだろう。タイトル・ナンバーではまさに若かりし日の輝きについて唄われ、“明るい未来を” と “ライ麦畑の迷路の中で” ではアルバム録音時期に急逝した作家サリンジャーへの思いが綴られている。とはいえメンバー4人全員が40代の今、彼らは決して過去の自分を懐かしむ歌を唄っているのではない。“エコロジー”、“Cold Sleeper” といった曲では現代の人間が進もうとしている道にアイロニーを送り、ギタリストの古市コータローが唄う “twitter” は世のツイッター・ブームをけん制しているかのよう。そして “今が最高!”、“イメージ・トレーニング” では、現在とこれからの将来に対して明るいヴィジョンを持って生きることの大切さを説いている。しかもこれだけのメッセージや主張を盛り込みながらも、どこか軽妙で、決して上から目線にならないあたりは絶妙だ。大人になっても一貫した姿勢を保ち続ける彼らのパワーあふれる作品である。
- 2012年
- 2022年
- 2005年
他のおすすめ
- Kotaro and the Bizarre Men
- 神聖かまってちゃん
- SALON MUSIC
- The ピーズ
- フラワーカンパニーズ
- 毛皮のマリーズ
- andymori