胎動

胎動

ブラジリアンジャズから和モノまで多彩な音源を巧みに使ったサンプリングによるスムーズなトラックと地に足が着いたコンシャスなラップでシーンに衝撃を与えた1998年リリースのファーストアルバム。大きな盛り上がりを見せていた1990年代後半の日本のヒップホップシーンにおいて、ラップとトラック作りの二刀流アーティストの先駆的な存在の一人でもあったLIBROのユニークな個性が存分に発揮されている。マッチョなセルフボースティングが多かったシーンに一石を投じるようなパーソナルで内省的な等身大のリリック、歌うようなメロディアスなフロウ、叙情性すら感じさせるソウルフルなトラックで描き出す世界観は日本のヒップホップではそれまで見ることができなかったフレッシュな景色だった。MOE'Tこと嶋野百恵の美しいボーカルをフィーチャーした「対話」、印象的なピアノの旋律を効果的に使ったメロウグルーヴの「雨降りの月曜」など、佳曲ぞろいの傑作アルバムだ。

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