東京出身のスリーピースバンド、羊文学のメジャーデビューアルバム。ソリッドなアメリカンオルタナティブロックと日本のインディーロックのキャッチーさを巧みに掛け合わせたアンサンブルの中、ハスキーながらも凛として伸びのある塩塚モエカの歌声が輝きを放つ。シューゲイザー～ドリームポップ・マナーのギターサウンドとヘヴィなリズムセクションがボトムを支える「mother」で幕を開けると、彼女らのルーツの一つでもあるチャットモンチーをほうふつさせる「変身」、フクダヒロア（Dr）の歌声も披露されるメランコリックな「ロックスター」、頼りがいのある歌い口で迫る先行シングル曲「砂漠のきみへ」、そして意表をつくテンポチェンジやアレンジで奥行きを増した世界観にうならされる「powers」など、どの曲も絞るとぎゅっと果汁がしたたり落ちるようなみずみずしさにあふれている。タイトルに込められた真っすぐなまなざしだけでなく、屈託やため息にもアクセルを踏んでいくスピード感がリスナーの背中を押し、誰が聴いても自分の中の若さを肯定的に抱きしめたくなるチャーミングな作品に仕上がっている。