人それぞれが異なる歩幅を持つように、人々の多様性に共感を寄せて紡がれたサードアルバム。その大半をロンドンの自宅で制作した本作は、回想的、夢想的だった過去2作と大きく様相が異なり、リアリスティックで力強く、時として生々しい日常の描写が多く登場する。オープニングナンバー「Work」やKANDYTOWNのMUDをフィーチャーした「Route」は、その新たな方向性がオーセンティックなヒップホップやR&Bに触発されたものであることを物語っている。ビートメイカーのAru-2との共同作業から生まれたダンストラック「Rally」や、吉本ばなな原作の映画とのコラボレーションソングとなった「Parallax」には、歌詞の共作に宇多田ヒカルが参加。さまざまな関係や距離感を描いたリリックを滑らかに伝えるフロウの多彩さや、その甘美な歌声を楽曲に溶かし込む繊細なサウンドアプローチなど、随所で小袋成彬らしい個性を発揮している。コンパクトな作品から濃密な音楽世界が広がる全7曲。