婦人の肖像 (Portrait of a Lady)

婦人の肖像 (Portrait of a Lady)

「ミュージシャン原 由子としての姿をお見せしたいという気持ちが強かったです」。サザンオールスターズのキーボードプレイヤーとして、音楽的にも精神的にも大きな存在である原 由子は、4作目のオリジナルソロアルバムについてApple Musicに語る。 前作『MOTHER』から31年という月日が開いたことについて彼女は「普段はサザンの活動が最優先ですので、なかなかオリジナルアルバムを出すタイミングがなくて」と説明する。「桑田(佳祐)からは『どんどん曲を作っておきなさいよ』と口を酸っぱくして言われていたんです(笑)。なので、お風呂に入ってる時とか散歩中なんかにふっと浮かんだメロディをメモするようにはしていました。それがだいぶたまってきて、2022年の夏ごろに桑田が『そろそろまとめてレコーディングしたら』と言ってくれたので、アルバムを出すことにしました」 制作にかけた時間は約1年。コロナ禍であることに加え、世界情勢も激しく揺れ動き、レコーディング中には本当に作り上げられるのか不安になることもあったと原は言う。「そうした状況もあり、今まで自由に楽しい音楽を続けてこられたということが、どんなにありがたいことだったかというのを思い知りましたし、こんな時こそ音楽が必要なんだという思いでこのアルバムを完成させました」 「Good Times~あの空は何を語る」で原 由子は、愛や平和、幸せの定義が揺らぐ時代に真摯(しんし)な思いを語っている。フォーキーなサウンドは原が10代の頃から大好きなクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングをイメージした。「『Déjà Vu』というアルバムが特に好きで、高校時代によくマネをしていました。同じようには弾けないんですけどね。それで今回、CSN&Yのようなギター使いをしたくてギターを弾きながら作りました。でも久しぶりにギターを抱えて弾いたものですから指が痛くて(笑)、いい音が出なかったので、レコーディングではいつもお世話になっている斎藤誠さんに『こんなコードで、こういうふうに弾いてもらいたいんだけど』ってお願いして弾いてもらいました」 制作は公私共にパートナーの桑田佳祐が全面的にバックアップした。桑田佳祐が作詞、原 由子と桑田佳祐が作曲した「オモタイキズナ」では、桑田がクールなラップを披露している。「私が仮歌を入れている時に桑田がスタジオに来てくれて、片隅で何かサラサラと書いてるなと思ったら『ちょっと俺、ラップやってみるわ』と言って急にやってくれたんです。ほとんど一発録りなんですけどカッコよくて、びっくりしました」 サザンオールスターズではアレンジャーとして腕を振るう原 由子だが、これまで自身のソロ作では唯一無二の歌声を持つシンガーとしての一面をフィーチャーした作品が多かった。原は言う。「思えばソロ2作目の『Miss YOKOHAMADULT YUKO HARA 2nd』では村上“ポンタ”秀一さんをはじめ素晴らしいスタジオミュージシャンに演奏していただき、私は歌に専念することが多かったし、前作『MOTHER』は子育て中だったので、アレンジは(桑田佳祐や小林武史に)お願いし、プロデュースしていただくことを楽しみながら学ぶという感じだったんです。でも今回はサザンのメンバーとして44年間培ってきた曲作りやアレンジのノウハウを生かしつつ、アレンジャーとしての私の部分を表現したいと思いました」 タイトル『婦人の肖像 (Portrait of a Lady)』は、クリムトの名画にインスピレーションを受けて付けられたもの。65歳という年齢だからこそ作れるアルバムになったと実感していたところ、桑田からの提案を受けて即決したという。「クリムトの『婦人の肖像』はとても素敵な絵ですし、実は若い婦人の肖像を描いた絵の上に、婦人の肖像が改めて描かれたというエピソードもあって。私も若かったころの自分を含めて今の自分があると感じているので、ぴったりじゃないかなと思いました」 長きにわたり音楽シーンのトップで奥ゆかしくも格別な存在感を見せてきた原 由子。31年ぶりのソロ作を作り終えて「これからは少しのんびり生活を楽しみたいですね」と笑う。「散歩や旅行をしたり、ボウリングしたり。でもやはり、音楽が一番の趣味だと思うんですよね。どんどん新しい音楽にも触れながら、自分の新しい世界も作っていきたいなと思います」

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