Paradise and Lunch

Paradise and Lunch

1974年、カール・ダグラスの「Kung Fu Fighting」や、アバの「Waterloo」がチャートを席巻していた頃、ライ・クーダーは何をしていただろうか。もちろん、彼はそんなことなどまったくお構いなしに、ブラインド・ブレイクの「Diddie Wa Diddie」のようなラグタイムの名曲を、ジャズ界のレジェンド、アール・ハインズとデュエットしていたのだった。それにしても、ライ・クーダーほどカジュアルに因習を破っていく者もいないだろう。彼の手にかかれば神聖にして不可侵と思われるような名曲でさえ、その様相を変えられてしまう。祝祭的で喜びに満ちた本作『Paradise and Lunch』でも、彼はいつものように、幅広いレパートリーをニヤニヤとしながらリアレンジしたことだろう。例えば、ボビー・ウーマックの「It’s All Over Now」にはジャマイカ風のリズムが与えられ、Washington Phillipsの有名なゴスペル曲「You Can’t Stop a Tattler」(1929年)でさえ、温かみのあるストリングスをまとわせて真実の愛の賛歌「Tattler」に変身させられてしまうのだ。ブラインド・ウィリー・マクテル作曲の「Married Man’s a Fool」でのライ・クーダーが熱くロックする特別な瞬間も忘れ難いが、やはり本作のハイライトは、壁やドアなどの無機物を擬人化したユニークな歌詞で知られるリトル・ミルトンのヒット曲「If Walls Could Talk」だ。ここでは幾重にも連なるギターとシャッフルするような重厚なグルーヴが、リスナーに至福の時間を運んでくれる。

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