結成20年を超えてもなおシーンの第一線で大きな存在感を放っているRHYMESTERの、2013年リリースの通算9作目のオリジナルアルバム。先行シングルの「The Choice Is Yours」をはじめとして、全12曲中5曲のプロデュースを手掛けているのは日本のヒップホップシーンを影で支えてきたエンジニア／プロデューサーのIllicit Tsuboiで、彼の手による楽曲を筆頭に、全編がザラついた肌触りのラフなサウンドで貫かれている。宇多丸とMummy-Dのラップも原点回帰的なフレッシュさと、ベテランならではの技が絶妙なバランスで共存していて聴き応え十分。キエるマキュウの破天荒な魅力が炸裂する「ドサンピンブルース」、クラブDJとMCのようなライブ感が魅力の「Deejay Deejay」、抑制の効いたラップがリリカルに染み入る「It's A New Day」など、ヒップホップの初期衝動に忠実でありながらも、決して懐古主義にはならないように巧みにアップデート。結果として他の何にも似ていないユニークな作品に仕上がっている。