1980年代中ごろからロンドンのジャズ・シーンを拠点としながら、Soul II Soul や Mica Paris など、多ジャンルのアーティストとも積極的にコラボレーションを行うなど、ジャンルをクロスオーバーした活躍を見せてきたジャズ・サックス奏者の Courtney Pine が1996年にリリースした自身7枚目となるソロ・アルバム。オーセンティックなアメリカのジャズだけでなく、自身のルーツであるカリビアン・ミュージックやアフリカン・ミュージックの影響、ヒップホップやアシッド・ジャズ的なアイデアも消化した上で制作された作品で、通常のジャズ・ミュージシャンに加えて DJ Pogo をレコーディング・メンバーに迎えるなど、狭義の意味でのジャズの枠にとらわれずに自由な発想で自身のルーツと新しいアイデアを融合させ、地に足の着いたサウンドで表現しているのが特徴だ。"Don't Explain" と "I've Known the River" では、同時代のジャズ・シンガーの中でも圧倒的な存在感を放っていた Cassandra Wilson をフィーチャー。ジャズという音楽の持つ可能性に果敢に挑んだ作品であり、1990年代中ごろのロンドンだからこそ生み出すことのできたジャズ・アルバムだ。