8701

8701

1990年代にアメリカ屈指の若手R&Bシンガーとしてアイドル的な人気も集めたアッシャーは、2001年に20代になって初めてのアルバムである、3作目の『8701』をリリースした。そんな新たな節目とともに生まれたのは、彼がそれまで情熱的に追い求めてきた恋愛には、いい時もあれば悪い時もあると分かり始めてきた若者の体験を事細かに描いた音楽だった。 不規則なコード進行が印象的なリードシングル「U Remind Me」で、アッシャーは夢中になれそうな相手を見つけるが、自分をひどい目に遭わせた元カノと似ていることで興味を失くしてしまう。「U Got It Bad」では、かすかなアコースティックギターに乗せて、ささいなことでの激しい口ゲンカが熱い恋心に変わるような混乱した恋愛の葛藤がつづられている。説得力のある歌詞は、こうした曲が実際の体験から生まれたものだと感じさせるが、このアルバムの魅力は彼が傷心のベテランであるところにとどまらない。 『8701』には、聴いた瞬間にライトに照らされ、汗と熱気でかすむダンスフロアに身を置いた気分になれる曲もいくつかある。例えば「I Don’t Know」では、ザ・ネプチューンズが手掛けるキラキラしたシンセを大量に取り入れながら、ディディがラップで語り掛け、アッシャーの天使のようなファルセットが新たな局面を切り開くという、何度も聴き返したくなる曲だ。「Good Ol’ Ghetto」のプロダクションにはスウィングとファンクが織り交ぜられ、8Ball&MJGやUGKといった当時アメリカ南部のヒップホップシーンをにぎわせたアーティストのスムーズなスタイルを演じてみせる。『8701』は、初期の段階で必要なツールをすべて装備した上で、今やより強固なものとして具体化する準備ができたアーティストという、アッシャーの未来像を見せつける作品なのだ。

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