ソウルフルでご機嫌なサウンドが人気の横浜の大所帯バンド、クレイジーケンバンド。彼らの楽曲は、懐かしさと新しさ、洒脱（しゃだつ）なセンスと俗っぽさといった相反するはずの要素が絶妙なバランスで混在している。1980年代から音楽活動をしていた横山剣が中心となって、本牧の伝説的なスポットとして知られるイタリアンガーデンで1997年にバンドは結成された。ギター／キーボードの小野瀬雅生、ドラムの廣石惠一、ベースの洞口信也、ギターの新宮虎児、サックス／フルートの中西圭一といった初期からのメンバーを中心に、トランペット、トロンボーン、コーラスなどを加えた編成で活動している。2002年にリリースしたシングル「タイガー&ドラゴン」が2005年に放送された同名のテレビドラマの主題歌として使用されてヒットを記録。横山剣自身は和田アキ子が歌うことをイメージして書いたというが、サビの印象的なリフレインを含めてクレイジーケンバンドらしさが存分に発揮されている。この曲のヒットが幅広い人気を獲得する大きなきっかけになった。ソウルやファンクのみならず、ブルース、ロック、ジャズ、ロカビリー、ラテン、さらにはムード歌謡や演歌まで、多彩な要素を貪欲に取り入れたジャンルレスで全方位型のサウンド。横浜や横須賀の情景が具体的に想起できるような表現がちりばめられた歌詞や、ボーカリストの横山剣の味わい深い歌声と粋な佇まい。他に似たアーティストが思い浮かばないようなユニークな魅力は、長い活動の中でも衰えるどころかますますパワーアップしている印象だ。日本の音楽シーンで唯一無二の強烈な存在感を放ち続けている。