1969年にオランダの小さな街ブレダで生まれたティエスト（本名タイズ・ミヒール・ビェルウェスト）。彼は世界屈指のエレクトロニックアーティストだけでなく、21世紀におけるDJのモデルが築かれる上で一役買ったアーティストだ。ティエストが活動を開始したのは、1980年代半ばのこと。そのころ、オランダのクラブではベルギーのニュービートがシーンを席巻していたが、彼の心を動かしたのは、より洗練されていてエモーショナルなトランスだった。1997年にリリースされた初の本格的なDJミックス『Magik One (First Flight)』では、タフで整ったドラムグルーヴの上にドリーミーなシンセサイザーのメロディを描くことで、その特徴的なスタイルを披露している。その後、トランスの第一人者として、ティエストはスポーツアリーナでソロのDJイベントを行ってスタジアムレイヴのパイオニアとなり、2004年には、アテネで行われた夏季五輪の開会式にて数百万人に向けてプレイした。また、トランスの世界的なプラットフォームの一つとして知られる彼のラジオ番組『Club Life』とミックスシリーズは、トランスというジャンルそのものの代名詞となった。だが、世界中のDJの頂点に立つティエストはそこで止まることなく、さらなる進化を見せる。彼は2011年リリースの『Club Life, Vol. 1 - Las Vegas』で、2009年のアルバム『Kaleidoscope』からのスタイルを踏襲する。それは、エネルギッシュなトランスと軽快なポップのメロディを融合させたサウンドで、EDMという次なる大きなレイヴ革命の到来を告げる作品となった。2014年リリースの『A Town Called Paradise』では、EDMの“何でもあり”のルールを実行すべく、自身の名を世に知らしめた痛快なメロディはそのままに、高らかなトップライン（歌メロ）と巨大なドロップ（フック）、そして、ビッグルーム（EDMの代表的ジャンル）の持つスリル感いっぱいのラインナップを発表した。2010年代が終わりを迎えるにつれ、ティエストはザ・チェインスモーカーズ、オリヴァー・ヘルデンス、DJスネイク、ハードウェルといった、彼の後に登場した新世代のプロデューサーたちとの遊び心あふれるコラボレーションを実現。自身の多才さを証明し、そのレガシーを確固たるものにした。