桜のような僕の恋‪人‬

APPLE BOOKSのレビュー

切なくもポジティブな結末で心が温まる恋愛をテーマに、小説と脚本の世界で活躍する宇山佳佑。本作は、著者が脚本家を夢見ていた20歳の頃からアイデアを温め続けた青春ラブストーリーだ。初めて真剣に恋と向き合った一組のカップルの心の揺れを、前半はコミカルに、後半はシリアスに映し出す。フォトグラファーの夢を諦めかけている晴人。一人前の美容師としてステップを登り始めた美咲。将来のことで頭がいっぱいで、恋愛から縁遠くなっていた2人は、桜の季節に客と美容師として出会い、ゆっくりと恋に落ちていく。ところが夏のある日、美咲は難病の早老症を発症する。余命は1年弱。一緒に過ごした3か月間を覚えていてほしいからと、美咲は理由を告げずに晴人の人生から姿を消した。突然のことに途方に暮れる晴人、病を受け入れきれない美咲、そして、妹の奇跡を信じて苦悩する兄。3人の心の叫びが絡み合う構成は、読み手の涙腺をとめどなく刺激する。泣ける恋愛小説としてSNSで人気に火がつき、ロングセラーとなった。2022年に実写映画化。