5本のエピソード

考える練習 (全5回)

考える練‪習‬ 武田邦彦

    • 社会/文化
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考える練習 (全5回)

    考える練習(5) 節水は良いことか?・・・環境を題材に

    考える練習(5) 節水は良いことか?・・・環境を題材に

    「節電は良いことか?」と似ていますが、「節水は良いことか?」も頭の体操として取り上げてみたいと思います. 一口に「水」といっても「海水」と「淡水」がありますが、地球上は「海水」が圧倒的に多く、それを太陽のエネルギーで蒸発させて淡水にしたものが川や湖の水で、人間に特別に役に立ちます。


    日本列島は自然に恵まれていて、降水量もその一つで年間6500億立方メートル。これは世界平均の約2倍、つまりかなりの水資源を持っているということになります。一度、地上に降った後、また蒸発するのが2300億m3ですから、およそ4000億m3が「使える水(淡水)」です。


    淡水の内訳は、農業・漁業に600億m3、工業用水に150m3、そして民間の水が150m3でおよそ900億m3が有効に使用されています。つまり、淡水の利用率はわずか22%程度ということです。かつて、川は主要な交通手段でしたから「淡水の利用」ということばかりではなく、「流れる水としての用途」がありましたが、今ではむしろ洪水などの原因になっても流れる水として生活に役立つことは少なくなってきました。


    このことを「日本の資源」ということで考えてみましょう。 「日本には資源がない」と言いますが、それは「石油、石炭、鉄鉱石」のような工業資源の一部だけを取り上げているであって、「太陽、海流、空気、水、石灰石、砂利、森林」などの資源を加えれば日本は決して資源が無い国ではありません。


    ただし、文科省が作っている教科書は資源について狭い見方(みんなが口にしていることをそのまま)で書かれているので、「日本には資源がない」とされていて、多くの子供たちもそのように錯覚しています。


    この錯覚は何をもたらしているかというと、たとえば水ですと「節水」ということになります。日本ではせっかく利用できる水の4分の1ほどしか利用していないのですから、「節水」とは「水をムダに海に流すこと」を意味しています。


    つまり、(奇妙な結論ですが)日本では「せっかく山に降った淡水の多くを利用せずに、ムダに海に流して塩水と混ぜている」と言っても良いですし、淡水を作るには太陽のエネルギーを使っていますので、「水を作り出した太陽のエネルギーをムダにしている」ということもできます。


    100%利用することは無理にしても、50%ぐらいは利用したいものです。そのためには「官がやっている水道事業を民に移して効率よくして、水の使用料金を2分の1にする」というところから始めるのが良いでしょう。


    日本の電気料金がアメリカの2倍であることで判るように、官・独占がやると民が行う場合の2倍は経費がかかります。「民がやると衛生が心配だ」という人もいるでしょうが、食品でもなんでも民がやっても規制がしっかりしていれば衛生的な問題はありません。むしろすでにペットボトルなどすべて民がやっているのですから、水道も同じです。今ではむしろ「水道の水は危険だから、ペットボトルの水を飲む」という時代でもあります。


    ・・・・・・・・・


    今回のブログは「考える練習」ですから、結論を得たいということではありません。「水は大切なもの。節水(使わない)」というのはどのような前提ででてきたのか? まだ工業化されていない社会で貯水池を作ることができなか

    • 5分
    考える練習(4) 節電は良いことか?

    考える練習(4) 節電は良いことか?

    モモの「時間泥棒」も有名ですが、社会にはなにかと人が大切にしているものを盗もうとしている人がいるものです。その一つに1990年までの高度成長とバブル崩壊で多くの日本人が「すこしやり過ぎじゃないか?もっと質素な生活をしないと」と思っているのを見て「これはお金を盗めるぞ」と考えた一団がいます。


    このことと似ているものに、「電子化されたお金の取引」が始まり、それまでは「金(きん)」とか「札束」という現物の移動があった巨額のお金の取引が、通信によって瞬時に行うことができるようになったという技術的進歩を逆手にとって、一儲けしようとした人が現れました。


    2008年のリーマンショック、2010年のギリシャ崩壊などはその一つの典型的な例とも言えるでしょう。金融は本来、多くの人の預金などを「社会で有用なことをしようとしている人に資金提供して社会の発展に寄与する」ことが目的ですが、それが「関係者の破滅を伴う単なるマネーゲーム」となったのです。


    さて、リサイクル、省エネ、温暖化、節電などはいずれもこの種の「お金泥棒」の類で、日本人が善良で節約家であることを狙ってきたものです。「もったいない」、「クールビズ」などもまったく同じ「ダマシの手口」なのです。


    ・・・・・・・・・


    節電はなぜ「ダマシ」なのでしょうか? それにはまず「アメリカ人一人あたり消費している電気は日本人の2倍」、「アメリカの電気代は日本の2分の1」、「日本の製品はアメリカの製品より安くて便利」、「日本人とアメリカ人はほぼ同じ所得」という4つ連立方程式を解いてみましょう。


    このような連立方程式を自分で解くときには、「あまり詳しいデータに振り回されず、少ないデータで頭を巡らす」ことをして、最終結論が得られたら、それからネットでデータを調べるなり、なにかのチャンスがある時に専門家に聞いてみるのが良いと思います(専門家の多くは複雑に回答してくると思いますが)。


    ・・・さて、始めます・・・


    東電が電気を作るのと新日鐵が鉄鋼生産をするのは工業生産としてはそれほど変わらない。かたや石炭を焚いてタービンを回して電気を作り、かたや石炭を焚いて高炉で鉄を溶かして還元する。両方とも大規模でエネルギー産業である。


    日本の鉄鋼は世界でも強い競争力を持っている。それなのになぜ、電気はアメリカの2倍のコストがかかっているのだろうか? 電気を作るコストは燃料費の他に、発電効率、送電距離などがあるが、いずれもアメリカより日本の方が優れている.発電効率の日本の技術は世界に誇るものだし、送電距離は国土の広いアメリカと日本では比べものにならない。


    となると、技術的には「電気代が2倍高い」とか「日本は一人あたりの電気をアメリカの2分の1しか作っていない」という疑問はますます深くなる.


    ・・・・・・・・・


    「考える」ためにはこの辺で一段落しておいた方が良いのが普通です.あまりギリギリと追い詰めるとだんだん専門の領域に入り、そこでうっかり「電力のデータ」などを参考にすると、また振り出しに戻ってしまうからです.


    この問題の難しいところは「本当に知らなければならないデータ」は、電力やマスコミが利害関係で明らかにしていないことと、「節電は大切なことだ

    • 10分
    考える練習(3) なぜ、人は眠るのか?

    考える練習(3) なぜ、人は眠るのか?

    眠れない夜。絶好の「睡眠薬」があります。たとえば「人はなぜ眠るのか?」と考えてみます。


    地球ができたとき、まだ地球が若くて元気だったので1日は4時間半だったと考えられています。それからさらに40億年の年月が経って多細胞生物が海の中に生まれた時にはすでに1日が20時間を超えるようになり夜も8時間ぐらいになっていたでしょう。


    やがて陸上動物が活動し始めます。昼の活動中は老廃物が体の中に蓄積し、最初はすぐ肝臓などで処理したのかも知れません。でも、夜行性の動物は別にして昼に活動するものは活動できる時間をフルに利用し、どうせ活動できない夜にまとめて老廃物を処理するものが登場してくたことも容易に考えられます。


    簡単に数字で示しますと、活動しながら老廃物を処理する場合は1時間に1.0しか行動できないとすると、1日の半分を活動し、1日の半分は寝ていて老廃物を処理するだけに使う動物は1時間に2.0の活動ができることになります。2倍の活動量ですから、「寝る動物」が「寝ない動物」より競争力があり、次第に「寝る動物」ばかりになったとも考えられます。


    ・・・・・・・・・


    人間の睡眠時間はほぼ7時間ですが、4時間半が老廃物の処理、2時間程度が頭脳の情報の処理、そして30分ぐらいがその他の調整と考えられています。


    かつて人間は毎日、畑にでて朝から晩まで力をふるい、あるいは家事に追いまくられて生活をしていました。その時の昼間の活動量は今の2倍はあるでしょう。そこで蓄積された老廃物を処理するのに4.5時間ですから、今では3時間もあれば十分と考えられます。


    一方、頭脳活動の方はやや盛んになったとはいえ、かつては「天気はどうか?」、「不意に盗賊が襲ってくることはないか?」など考えることも多かったのですが、今ではスイッチ一つ、命令一つでそのまま動けば良いのですから、頭脳もほとんど使わなくなったと思います。それでも一応2時間程度その他の活動も含めて割り振ってみます。


    そうすると{老廃物3時間+頭脳2時間}で5時間睡眠が適当ということになります。いずれにしても、現代ほど肉体労働が少なければ体の老廃物が蓄積することは無いのかも知れません。「泥のように眠った」と昔はよく言いましたが、体が疲れていると「バタンキュー」だったのです。


    ・・・(ここまで考えてもまだ寝付けないときに)・・・


    ところで現代人は昼間の老廃物が夜に残ることがあるのでしょうか? 食べ過ぎて消化にエネルギーを使う場合は別にして、健全な生活をしていたらもしかすると老廃物をとるために夜、寝る必要が無いかも知れません。


    30年ほど前、ある実業団のテニス部の部長をしていたことがありました。ある時、キャプテンが並外れた体力を持っていて、練習中は若干老廃物がたまっている感じがしましたが、ベンチで休んでいるとみるみる回復していくのが判るのです。合宿などに行くと毎日3時間ほどしか眠らないのに、体の切れが変わらず疲労が蓄積しないのです。


    その時、私は「ああ、活動中に回復する人もいるのだな」と感心したものです。人によって違うと思いますが、もしかすると「現代風の訓練」をすることによって活動中に老廃物を処理できれば寝るのは2時間ということになります。


    さらに頭の

    • 10分

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むちゃや

楽しみにしていましたが・・・

どうしたのでしょうか?更新されないようですが???

Fuao

ためになった!

先入観を持たず、事実を並べて自力で考える事が大切ですね。

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