「フランツ・カフカ」のゲームだなんて、奇妙に思うかもしれません。実際、本作はいい意味で奇妙なゲームです。カフカ的な設定を活かした本作で、主人公の前に立ちはだかる試練は、シュールでつかみどころがないものばかり。プレイヤーはそのつど、困惑させられながらも、次はどんなことが起きるのか気になって、先へ先へと進みたくなってしまうのです。
ストーリーはカフカ本人とは関係ありません。舞台は1924年、チェコはボヘミア。恋人・フェリスとの仲を引き裂かれた心理療法士のK(カフカの著作「城」の主人公と同じ名前)は、ある日一通の手紙をきっかけにアメリカへと旅立ちます。物語はそこから二転、三転。カフカ作品へのオマージュを散りばめつつ、予想もしなかった方向へと転がっていくのです。パズルを解くにも、ストーリーを進めるにも、常識に囚われない、クリエイティブな発想が試されます。
とにかく抽象的なこのゲーム。患者の心の中をのぞいてトラウマを取り除いてあげたかと思えば、今度は突然、自分自身の潜在意識にとらわれてしまいます。また、Kが動けばパズルも反応します。どのパズルもいざ解いてみると妙に納得できてしまうのが、本作ならではの面白いところ。
マグリットやダリの絵を思わせるアートスタイルも美しい「The Franz Kafka Videogame」は、巧妙さと意外性が癖になるアドベンチャーゲームです。